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2007.02.11

「溢れた月」5

僕は両手で兎を包んだ。
おじさんは僕の手の中でかしこまっている兎を満足げに眺めていた。
「バナナ屋出来ないけど、こうやって焼き芋屋にもなれたしな、コイツに食わせなきゃってのも 今は 張り合いになってる。コイツ、自分のいる意味分からないっていじけてるんだよ。餅つきの兎には餅つきって仕事があるし 自分が居なくたって月は廻るしってさ。でも コイツがわしのとこに来てくれなかったら、焼き芋屋はやらなかっただろ?」
兎は手の中で温かかった。その温かさは僕全体を 優しさで満たしてくれた。
大きな「意味」じゃないか。
「いっぱい食べて、元気に月に帰れると良いな。」
「ほんとは、コイツが帰らなきゃ月の深爪治らないんだ。」「なぁんだ。 あはは。」
兎が月に帰ればおじさんも バナナ売りができるけど、少し寂しい。
「ね、いつか、僕の所にも 生まれてきてよ。僕には見えないけどきっと 温めるよ。」
兎は嬉しそうに僕の手を舐めた。
「それから、たまには、おじさんとこに 落ちてきて、焼き芋食べさせて貰えば良いさ。」
ふと 僕も焼き芋屋さんになろうかと思いかけたが それはやっぱりおじさんにしか出来ない仕事だ。

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