« 「溢れた月」3 | トップページ | 「溢れた月」5 »

2007.02.09

「溢れた月」4

「この仔、餅つきをしてる兎なんですか?」
「いや 餅をついてるのとは 種類が違うよ。」
良かった。月から落ちて来たと言う兎は、どう見ても労働に向いていそうにない。
「コイツは 月の卵から生まれるんだ。」それは また、初めて聞く話だ。
「月の卵ですか?」「そうだよ。見上げた人の冷たく暗い心の夜空に、満月は卵を生む。月の卵は受け止めた人の心を温めるんだ。
月の卵は温かい。たけど 心を温め 代わりに冷えきって 知らないうちに消えてしまう。
心が卵を 温め返せたとき、そこから孵るのが、コイツなんだな。」
「へぇ。そうなんだ!」
兎は 恥ずかしそうに自分の耳を握り締めながら おじさんと僕を代る代る見上げた。
「そこまで育つのも、希だし 実際は目に見えないんだよ。 今コイツ、落っこって来ちゃって自信無くしてるんだよ。」
おじさんが 促すと兎は 耳を広げふわりと宙に浮かんだ。
「触っても いいですか?」
僕の言葉が分かるようで、兎は 浮かんだまま 僕の手の上まで来た。
「あはは。気に入ったみたいだな。」
そう、リストラって名の爪切りで会社ってお盆の縁を切りすぎてて、僕だってそこから溢れそうで 兎も僕も似た気がした。

|

« 「溢れた月」3 | トップページ | 「溢れた月」5 »

コメント

満月が月の卵を生むんだね。
そして人の心をあたため消えてしまう。
稀に人の心が卵をあたため返して兎が生まれる。
なるほど労働者向きの兎じゃないのか。
空中に浮かぶ兎、イメージするだけでかわいいな。
この兎の役目はなんだろう。
まだこの物語はつづきそうだな。
これはもうここまででも相当のボリュームになっているね。
リストラに僕があう前にこの物語、終わるのだろうか(笑)。

投稿: nezimaki | 2007.02.09 14:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19705/13844480

この記事へのトラックバック一覧です: 「溢れた月」4:

« 「溢れた月」3 | トップページ | 「溢れた月」5 »