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2007.02.02

「溢れた月」1

歳の瀬が迫って 仕事に追われ
今日も僕は終バスで 帰ってきた

星も凍るような ツンと澄んだ 寒い夜だ。
バスを降りた人のまばらな 群れを 見送りながら ゆっくり歩き出すと
そこには出迎えるように
仄かな光をともした軽トラックが止まっていて
甘く香ばしい煙がたなびいている。

焼き芋屋さんだった。
丁度若い女性が ひとつ買ったらしく
おじさんはホカホカの 焼き芋を一本折って見せて
味見だと言いながら一片あげていた。

そんなよくある光景を横目に 家へ帰るところだった僕は
それでも何か気を引かれて 僕は焼き芋屋さんを通りすぎてしまうまで視界に捉えていた。
特に何も無く通り過ぎたかと言う所で、ふいにそのおじさんに 呼び掛けられた。
「お兄さん ほれ、あんたも。どうせ一本割っちゃったんだから食べてって。」
そう言われて思い出したように 腹の虫が鳴る。
疲れて、バスに乗るまでは食欲なんて湧かないし 食べるのも面倒だと思っていたのに。
何故か自然に嬉しくなれて 芋の欠片を受け取ると 気のせいかそれが丸い月のように光って見えた。
温かい焼き芋は 溶けて染み入るように甘くて美味しかった。

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コメント

物語り、スタートしたんだね。
ひょんが紡ぐ詩と物語りでは
文体がまったく変わるね。

芋の欠片が丸い月のように光って見える…って表現がすごくいい。
これからどう物語りを導くのか楽しみにしています。

投稿: nezimaki | 2007.02.03 08:31

今パソコン開けない日が多いです。
記事文 休憩時間にポチポチメール本文に 打ってます。
私の携帯は 英雄なので 千文字づつしか送れません。
多分読みにくいですよね。
紙に書いて打ち込む方法だと 途中でほっぽってしまうので。

投稿: ひょん@携帯から | 2007.02.05 10:08

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