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2004.10.25

「月の爪切る男」

今日は珍しく早く帰ってきた。
夕暮れの茜色の街を走ったバスは
終点の新興住宅のバス停に着いて止まった。
僕は 急ぐでもなかったので 降りる人々を見送り
一番最後にバスから降りた。

僕がバスを降りて歩き始めた頃には
人はすでにばらばらと散っていて
じきに辺りは静かになった。

通いなれた路を少し行くと小さなスーパーがある。
そこは、丁度夕方の買い物客で賑やかだった。
敷地のはずれには・・・大体、物売りが出ているものだ。
・・・今日は何が来てるんだろう?と、覗き込むと
バナナを売っていたようだが、おおかた売れてしまっていたようで
もう 片づけを始めていた。
もうお仕舞いか・・・・・・
よほど僕は物欲しげに眺めていたように見えたのか
おじさんと目が合ってしまった。
 恥ずかしい。
「食べない?残りだけど。な、食べてきなよ。」
おじさんは残っていた一房のバナナを
手早く僕と、近くを通った子ども達に
ボキボキと分けて、半ば強引に押し付けるように配った。
黄色くよく熟したバナナは夕暮れの中で
光るように見えて、暖かな懐かしい味だった。

僕はバナナを頬張りながら考えた。
バナナなんて珍しくも無いのに
わざわざバナナだけ売っているなんてちょっと奇妙だ。
「ごちそうさまー」 食べ終えた子ども達が
おじさんに皮を手渡して、急ぎ足で帰って行った。
僕達がバナナに夢中になっていた僅かの間に
おじさんは荷物をすっかり纏めて全部背中に担いでいた。
「じゃ、ね。」 おじさんは僕からも皮を受け取ると
向こうへ歩き始めた。

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コメント

まだまだみなは読みきれませんが、ひょんさんのお話には
月が出てくるものがたくさんありますね。
「月の爪切る男」続きが楽しみです。
(プレッシャーかけてるわけじゃぁありません)

投稿: ポージィ | 2004.10.22 21:44

内容にはまだ出てきていないけど、
感のいい人には もうオチが判ってしまっていそうです。
一気に書いちゃえば良かったな~
とはいえ、
今回はじかに書いていて
推敲もしてません・・・


投稿: ひょん | 2004.10.22 21:49

懐かしさに包まれる筆の運びなので おっ 雰囲気がいつもと違うぞと思った。 時代は現代のはずなのに 全体を流れている雰囲気は戦後10年を経った頃の情景を彷彿させてくれるのは どうして・・・・。

続きは休み明け・・・・ですね。 
それまで ひょんさんに会えないのか・・・・違う違う・・・・これだとセクハラだと訴えられる。

ひょんさんの物語の続きに休み明けまでは会えないのか・・・・でした(^^)

投稿: nezimaki | 2004.10.22 22:38

私も、そのバナナがひとつ欲しくなりました。
続編を楽しみにしています。

投稿: nanbu | 2004.10.23 07:26

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